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当センターでは、鉄鋼材料等の成分分析依頼を多数受け付けています。今回は、鉄鋼材料中の炭素と硫黄の定量分析例について紹介します。鉄鋼材料では、炭素の含有量が増えると、硬さや強度が向上します。その一方で、延性や靭性は低下するなど、炭素含有量は、材料の機械的性質に大きく関わっています。また、鉄鋼材料中に硫黄が多量に残存する場合、製品の割れや折れの原因となります。これら二つの元素について、当センターでは、炭素・硫黄分析装置を用いて定量分析を行っています。
図1は炭素・硫黄分析装置の外観になります。
機器名:炭素・硫黄分析装置
型 式:(株)堀場製作所 EMIA-Expert
導入年:令和2年度
〔主な仕様〕
測定方式:高周波誘導加熱方式、赤外線吸収法
測定範囲:炭素:0.6 ppm-10.0%、硫黄:0.6 ppm -1.0%
ハロゲントラップ有
炭素・硫黄分析装置の使用にあたっては、まず、図2のように、高周波燃焼炉で試料を燃焼させます。燃焼の際には純酸素を供給します。るつぼ内の試料は高周波誘導電流により加熱されます。燃焼促進のために、るつぼの中に、助燃材として、タングステン、スズ粉末を添加します。燃焼により試料中の炭素は二酸化炭素(CO₂)と一酸化炭素(CO)に、硫黄は二酸化硫黄(SO₂)に、水素は水(H₂O)に酸化されます。発生した気体と水は酸素とともに、ダストフィルタを経由し、脱水剤でH₂Oを除去した後に、赤外線検出器に送られ、炭素及び硫黄を同時に測定します。

炭素・硫黄分析装置では1~2分の試料燃焼で迅速に測定を行うことができます。また、当センターの装置はオートサンプラーを備えているため、多数の試料を連続で測定できます。

炭素鋼(S20C)の分析例を紹介します。
今回は、実際の依頼事例ではなく、炭素及び硫黄の含有率が既知である標準片S20C(炭素:0.196%、硫黄:0.0077%)を分析試料とし、装置の分析精度を確かめました。
炭素・硫黄分析装置で、S20C、標準試料2点及び空試料(炭素及び硫黄を含まない。)をオートサンプラーにセットし、炭素・硫黄分析装置で分析します。すると、測定した赤外線吸収量から算出された炭素検出値及び硫黄検出値と、標準試料の表示値から算出した炭素量及び硫黄量との関係が表された図4及び図5のようなグラフが求められます。また、図4及び図5のR2値は決定係数を表しています。R2値は1に近づくほど、測定精度が高いことを表します。

そして、図4及び図5中の近似式を使って、S20Cに含まれる炭素量及び硫黄量を計算します。含有率に換算すると、それぞれ0.195%、0.0076%であることが分かりました。試料の標準値と比較しても、大きなズレがなく、高い精度で炭素と硫黄の定量分析を行うことができました。高い精度で定量分析を実施できることが、炭素・硫黄分析装置の特徴となっています。
炭素・硫黄分析装置は、鋼材の判別、製品の品質管理、金属の破断や腐食の原因調査に活用することができます。また、鉄鋼材料以外の金属材料やセラミックス材料等の分析も可能です。成分分析に関するご相談は下記までお問い合わせください。
工業技術センター 材料技術室
TEL : 082-242-4170(代表)
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