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SBTとは、「Science Based Target」の略です。企業が持続可能な未来に向けて、温室効果ガスの排出削減目標を設定し、それを達成するための具体的な計画を立てる取組のことです。企業が、気候変動に対してパリ協定が求める水準と整合した科学的に基づいた目標設定を行うことで、地球温暖化の進行を遅らせることを目的としています。"パリ協定が求める水準"とは、「世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑え、さらに1.5℃に抑える努力をすること」になります。SBTは、気候やエネルギー等の持続可能性を研究する団体や生物多様性の保全等を目的とした活動を行う団体など、国際的な4団体により運営されています。
日本国内での削減目標は、2030年までに2013年度比46%削減とされています。近年、気候変動による異常気象の増加・自然災害の激甚化のリスクは、サプライチェーンの寸断、施設・設備へのダメージ、従業員の健康被害など、企業活動の存続にも悪影響を及ぼしています。企業活動において温室効果ガスを削減する取り組みを行う「脱炭素経営」の要求が高まる中で、SBT認定の取得が増加しています。

※赤の点線は、ICPP(気候変動に関する政府間パネル)報告書における温度上昇を1.5℃に抑える経路
SBTは、国際的な共通基準で評価・認定された目標であるため、パリ協定に整合する持続可能な企業であることをステークホルダー(投資家、顧客、サプライヤー、社員等)に対して分かり易くアピールでき、以下のメリットが挙げられます。
〇SBT設定は自社の持続可能性をアピールでき、CDP(※)の採点等において評価されるため、中長期的な投資の呼び込みに役立つ。<対投資家>
〇SBT設定をすることはリスク意識の高い顧客の声に応えることになり、自社のビジネス展開におけるリスクの低減・機会の獲得につながる。<対顧客や対取引先>
〇企業が省エネ、再エネ、環境貢献製品の開発に取り組むことは、コスト削減や評判向上といった企業価値向上につながるとともに、社内に対して野心的な削減目標を課すため、積極的な削減取組を求めることにつながる。<社員の意識向上>
※CDP:企業の気候変動、水、森林に関する世界最大の情報開示プログラムを運営する英国で設立された国際NGO
SBTには、通常版と中小企業版があります。
中小企業版SBTは、大手企業などが取得する通常版SBTと比較して、温室効果ガスの削減目標範囲が自社内の事業活動での範囲になること、削減目標の基準に設定する年度の自由度が高いなどの特徴があり、中小企業が取り組みやすくなっています。中小企業版SBT認定の取得はここ数年で急激に増加し、国内での認定数は昨年末には1000社を超えています。

当センターでは、環境経営に関する企業の意識向上や関連技術の開発等による新たな競争力強化を支援することを目的に環境経営実践講習会を年に1度開催しています。今年度の講習会はSBTをテーマに令和7年2月7日に開催しました。
講演①
○テーマ:温室効果ガス削減の必要性と中小企業向けSBTについて
○講師:環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 脱炭素ビジネス推進室 課長補佐 峯岸 律子 氏
講演②
○テーマ:中小企業の環境経営と企業価値の創造
○講師:岡山大学学術研究院社会文化科学学域 准教授 天王寺谷 達将 氏
講演③
○テーマ: 持続可能な社会の実現のために!脱炭素経営に向けたSBT認証取得について
○講師:株式会社ますやみそ 代表取締役社長 舛本 知己 氏
講演①と②では、SBTの概要や認定取得によるメリット、温室効果ガス排出量の算出事例、中小企業が取り組むにあたっての国の支援事業などのお話をいただきました。
また、講演③では、SBT認定を取得された企業の方に、取り組みのきっかけや成果についてお話しいただきました。削減達成の取り組みとして再生可能エネルギーへの転換、高効率の設備への更新、生産現場での配管チェックなどによるエネルギーロスの洗い出し等を実施されたとのことでした。成果として、2030年を待たずして削減目標を達成できる見込みであること、電気代の大幅削減が実現できたこと、工場での見直し活動等により社員の方の意識が大きく変わったことなどをご紹介いただきました。
大企業が通常版SBT認定を取得した場合、入手する原材料やその輸送、販売後の商品の使用や廃棄など、自社製品に関係する上流/下流での排出量について取引先に対してCO2排出量の提示を求めることとなります。自社だけでの努力には限界があるため、サプライチェーン全体での取り組みが必須となり、結果として取引先に排出量の削減努力を要求することが予想されます。そのため、中小企業においても、今後は、自社のCO2排出量計算や削減対策が必要となると思われます。

講演後の意見交換会では参加者から多くの質問が寄せられ、関心の高さがうかがえました。環境省のサイトには、SBTの概要、CO2排出量計算ガイド、公的支援事業、モデル事業成果など、参考になる情報が掲載されています。
今後も当センターでは、環境経営の取り組み事例やCO2排出量削減に資する技術情報を紹介する講習会の開催や、環境経営支援の公的支援事業紹介の配信を行う予定です。
※掲載した図は、令和6年度環境経営実践講習会で環境省の講師の方から紹介されたものを一部編集しています。
(参考)
〇排出量削減目標の設定 | グリーン・バリューチェーンプラットフォーム | 環境省
〇岡山大学生による製品のCO2排出量可視化チャレンジ成果報告会を開催 - 国立大学法人 岡山大学
〇脱炭素経営に向けて SBT認証を取得しました - 株式会社ますやみそ - Masuyamiso -
工業技術センター 技術振興室
TEL : 082-242-4170(代表)
E-mail : kougi@itc.city.hiroshima.jp