研究報告「チタンおよびチタン合金焼結のための静水圧プレス技術の利用」


 今回の研究は、冷間静水圧プレス装置、熱間静水圧プレス装置、 金属カプセリング装置等の試験機器を用いて、 チタン及びチタン合金を粉末冶金(焼結)法により研究したので、 その概要を紹介します。

■担当者

●研究指導係
●技  師  隠岐 貴史 
●専門分野
 金属材料
1.はじめに         
 チタン材は高い比強度、優れた耐食性などの特性を活かして 航空・宇宙、化学・石油化学、電力などの多分野で利用されている。

 しかし、チタン材は難加工材の一つであり、 その加工コストはアルミニウムの数倍とも言われており、 同時に歩留まりの悪さから高価な材料となっている。 この高コストが実用材として用いるための障害となっている。 そこで、従来の製造プロセスの欠点を改善する試みとして 粉末治金(焼結)法の利用が多方面で研究されているところである。

 さらに、近年、高純度のチタンあるいはチタン合金粉が容易に入手できるようになったため、 これらを実用部材として用いるためには、 できるだけ完成品に近い形状(near net shape)を作り、 歩留まりの向上と加工費の低減という点で焼結法を適用することが有効である。


2.粉末冶金(焼結)法    
 焼結法では、一般に図1に示すような、粉末の混合(2種類以上の粉末)、 成形、焼結のプロセスにより製造される。

 粉末の成形にはいくつかの手法があり、その一つとしてCIP (冷間静水圧プレス)を用いた方法がある。 CIP成形は量産性には不向きであるが、ゴム型を用いるため型費が安価であり、 小量多種生産が可能で、特に複雑形状品に有効である。 また、成形強度が高く、密度むらが少ないなどの利点を有している。 次工程として成形後、成形体を真空中またはアルゴンガス中において焼結を行う。 チタンは非常に活性な金属であるため酸素、窒素との親和性が高く、 真空焼結では0.001Pa以上の高真空下で行う必要がある。

┌──┐ ┌──┐ ┌──┐ ┌──┐ ┌─────┐
│粉末│→│混合│→│成形│→│焼結│→│HIP処理│
└──┘ └──┘ └──┘ └──┘ └─────┘
  │                    ↑
  └────────────────────┘
         (カプセリング)

    図1 粉末冶金漬を用いた製造プロセス



 
冷間静水圧プレス装置
 
熱間静水圧プレス装置
 
金属カプセリング装置
3.HIP法         
 一般に、無加圧下で作成された焼結材には空孔が存在する。 この空孔は、材料特性からみたときに欠陥として働くことが多く、 特に、疲労特性、衝撃特性を問題とするときには、 その与える影響は大きい。チタン材の場合、 その特性から過酷な条件下での使用が多く、 空孔の除去を必要とすることが多い。 空孔を除く手段として温度と圧力の相乗効果を利用した HIP(熱間静水圧プレス)法がある。 HIP法には大きく分けて金属カプセルを用いるカプセル法と、 直接HIP処理を施すカプセルフリー法がある。 カプセル法は、粉末をカプセルに入れ、加熱脱気、 溶接などを行いカプセル中に封入 (カプセルが金属の場合、形状によっては 金属カプセリング装置を用いると非常に便利である)した後、 カプセル面を利用してカプセルごとHIP処理するものであり、 一方、カプセルフリー法は、成形、 焼結プロセスにより予備焼結体を予め作成しておき、 直接HIP処理を施す方法である。ただし、この方法の場合、 予備焼結体の相対密度として93〜95%以上が必要となる。


4.評価について       
 以上の手法を用いてチタン材について現在研究を行っているところであり、 研究内容の一部である機械的特性の引張強さ、疲労強度の評価をおこなっており、 疲労強度を比較したものを図2に示す。また、 焼結材料のじん性評価としてシャルピー衝撃試験は広く行われ、 破壊に要するエネルギーと変位、 時間を相関的に計測することができる計装化シャルピー衝撃試験機を用いることで、 動的な破壊機構の解析が可能となる。図3に、 この方法で実験した焼結チタン材の衝撃データを示す。



図2 Ti−6A1−4V合金の疲労強度の比較

TPNo.     :N02        Test Ve.   : 5.542 m/sec
Material  :Y          JIS Energy : 15.029 J   
Test Date :94/08/23   Pmax Load  :  12109 N   
TP.size(t): 10.00mm   Pmax Stress: 1135.2 MPa 
       (w): 10.00mm   Pmax Disp. :     .67 mm 
       (a):  2.0mmU   YeId Load  :     793 N  
Angle A   :147.5deg   Energy 0   :500.25 J    
      B   :142.0deg   Energy 1   : 13.00 J    
5.終わりに         
 他の材料への焼結法適用のメリットは周知のことであるが、 チタン材への応用例は数少ない。 これは、チタン材のメリットを活かすプロセスが確立されていないところに原因があり、 焼結法による製品化を広げるためにも、そのプロセス技術の確立が必要である。 本研究においても、組織制御、微細な破壊現象の解明などに詳細な検討を必要とし、 研究を進める上で最も苦労した点は、多くの一様なテストピースの作成およびその加工である。 さらに、重要なことは焼結プロセスはもとより、 他の実験要因を細かく整理するとともに時間的な労力を十分に費やすことである。



 

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